大判例

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仙台高等裁判所 昭和30年(う)280号 判決

なる説示をした上、主文において「被告人を懲役一年及び罰金五千円に処する。右罰金不完納のときは二十五日間被告人を労役場に留置する。押収にかかる注射液二十一本、葉たばこ二、五〇〇瓦及刻機械一台は之を没収する」と判示している。ところで、右原判示の適条のうち末尾の覚せい剤取締法第四十一条の三、たばこ専売法第七十五条はいずれも没収に関する規定であるから、主文末項の没収の言渡をするための適条であり、また刑法第十八条は主文第二項の労役場留置期間を定めるための適条であることは明かであるから、これらの点については違法の廉はない。しかし、その余の適条と主文とを対照して考察すると、原判決の挙示している各法条の法定刑は、覚せい剤取締法第四十一条第一項(原判決の適用している覚せい剤取締法は昭和三十年法律第百七十一号による改正前のものである)のものは懲役又は罰金、同条第四項のものは懲役又は情状により懲役及び罰金、たばこ専売法第七十一条のものは懲役又は罰金である。刑法第四十七条を適用しているところからみて、原判示の各罪のうち二個以上のものについて懲役刑を選択して併合加重をしていることは窺われるが、果していずれの罪について懲役刑を、いずれの罪について罰金刑を選択したかは全く不明である。即ち、原判決には処断刑の由つて来たる所以を明かにしない理由不備の違法があるものといわざるを得ない。論旨は理由がある。

次に、職権を以て調査するに、弁護人は職権の発動を促す趣旨で本件刻機械は製造たばこの製造用機械ではない旨主張するところ、原判決は、原判示(乙)において、被告人が製造たばこの製造用器具機械である葉たばこ刻機械一台を葉たばこ約二、五瓩と共に不法所持した事実を認定し、右葉たばこ刻機械一台を没収している。ところで、たばこ専売法第六十六条第一項にいわゆる「製造たばこの製造用器具機械」というには、必ずしも本来製造たばこの製造器具機械として製作されたものであることを要しないが、本来製造たばこを製造する器具機械として製作されたものでない場合には、その器具機械は製造たばこを製造することができ、かつ犯人においてこれを製造たばこの製造に反覆して使用する意思を以て所持する場合であることを要するものと解すべきである。故に、後者の場合には犯人に製造たばこ製造に反覆使用するの意思なく、偶々ただ一回だけ製造たばこの製造に使用したというだけでは、それを以て直ちに製造たばこの製造用器具機械というを得ない。記録及び当審における事実取調の結果に徴すれば、本件刻機械は本来製造たばこの製造機械として製作されたものではないこと、数年前約一個年間被告人の兄がするめ裁断に使用したものであるが、被告人はこれを兄から貰受け、葉たばこ裁断に使用したのは、昭和二十九年九月紺野兵七が被告人方へ来た際これでたばこが刻めるといい、同人から頼まれた葉たばこ約三百匁中約百匁を両人で刻んだことがあるだけであり、その後同年十月末頃家主の丸山清吉から葉たばこ約四、五百匁頼まれて預つたが、被告人は葉たばこを刻むことは悪いことだと思つて刻まずにおり、他に依頼者があつても刻まないつもりでいたことが認められる。被告人は検察官に対し、家主丸山清吉から葉たばこ約四、五百匁を頼まれ、これを刻んでやるつもりでいたが、豚の飼養、小屋の建築等で忙しく刻まないでいるうちに発見されたものである旨供述しているけれども(たばこ専売法違反の記録第二六丁裏)、本件刻機械で葉たばこを刻むのは極めて簡単容易であるのに、昭和二十九年十月末頃に預つてから同年十一月二十六日警察官に発見押収されるまで約一個月間も全然刻まずにそのまま放置しておいた事実(同上記録第一六丁)に徴するも、検察官に対する供述はたやすく措信し難く、被告人の当審における供述はこれを単なる弁解として遽かに排斥し去るを得ないのである。されば、被告人は本件刻機械を葉たばこの裁断に偶々一回使用したゞけで、これを反覆使用する意思のあつたものと認めるのは困難である。従つて、本件刻機械は製造たばこの製造用機械とは認め難いから、原判決が原判示(乙)においてこれを製造たばこの製造用器具機械であるとしてその不法所持を認定したのは、事実を誤認したかないしは法律の解釈を誤つたもので、延て本件刻機械を没収したものであり、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決はこの点においても破棄を免れない。

(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 細野幸雄 裁判官 岡本二郎)

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